ピアニストが活躍する映画特集

音楽が生きる糧として

今はプロの音楽家として

光にふれるで主演デビューを果たしたホアンさんの本職は演者は演者でも、ピアノを奏でる音楽家としての側面が強い。盲目のピアニストとして台湾を拠点にして国内だけでなく、世界にも通じるピアノ技術は高く評価されています。現在はピアニストとしてだけでなく、作曲・編曲も担当するなど音楽業界の奥深くへと通じています。

ピアニストなのに映画を取るってどういうことなんだろう、と思う人もいるでしょう。本人が本人役として主演し、演技から演奏の全てを担うというのは実際にどんな気分なのか。さすがに自伝的な映画作品を自主的に作る、という人がいたら基本よっぽど自分が好きなんだろうなぁという偏見が先行するかもしれません。実を言えば筆者も最初はそう思っていた、なにせこれまで日本でも発表されてきた偉人でもない、それこそたかだか芸能人ごときを焦点に当てた映画を見せられても感動も何もない。ただ自分すごいだろう的な、ドヤ顔が連想してくるので素晴らしいもヘッタクレも思いもしない。

普通はそういうものですが、やはり今作における音楽と彼の半生という点が外せないはずだ。戦場のピアニストもまた実話で、主人公である『ウワディスワフ・シュピルマン』は戦乱の時代にて突如人権を奪われ、人として生きることさえ許されなかった時代を生き延びるまでの話になる。

戦争時代とは違う、まだ平和な現代においてピアニストとして活動するはずだったホアンさんの半生も、決して穏やかなものではありませんでした。

実力を正当に評価されても

ホアンさんの実力は今でこそ誰もが認めるピアニストとして台湾国内で、業界で彼の名を知らない人はいないくらいの有名人だ。さすがに国外となったら、業界によほど精通している人でないと耳にする機会はないかもしれませんが、知っていて損はしません。本来なら子供の頃から世界を舞台に活動していくことも出来たが、彼に対して世界は認めても矮小の世間において彼を認めようとしない声もあった。

それこそ彼が表舞台という栄華から逃げるようにひっそりと暮らすまでになった、中傷が関係している。コンクールにて、盲目でありながら奏でる一音一音からあふれる表現と音の多彩さは、当時から彼を『天才少年』と関係者を唸らせました。目の見えない、健常者ではない息子の恵まれた音楽の才能を誰よりも喜んだのは両親でしょう。元々音楽に詳しい家柄ではなく、台北の田舎で果樹園を営む農家がホアンさんの実家だ。

農業をすることは出来ないこと、長男という男出だったが視覚障害という欠点が、彼の両親を苦しめたことでしょう。息子は1人でこの先を生きていけるのか、そう心配していましたが、ピアノという楽器の出会いで見えた活路に喜びというよりは、安心に近い感情があったかもしれません。ただそんな思いを踏みにじるように、彼の才能を妬む声も多く、盲目だから受賞したと事実ではない噂や誹謗中傷が、幼かったホアンさんの心を抉った。

羽ばたいていけるはずだったホアンさんは、自らの足で舞台という手にすることがなかった光を、輝きを手放してしまいます。ですがそれを見て容認したものの、彼には音楽しかないと本人よりも理解していたのは両親でした。この先自分たちがいなくなっても、自立できるように、音楽を糧に生計を営めるようにその背中を押します。これがきっかけとなり、ホアンさんはピアノと向き合う勇気を取り戻し、再度音楽の最前線へと舞い戻っていく。

栄華を手に入れるために

天才と称されるホアンさんですが、コンクールに出場することは無くなっても彼が音楽から離れることはありませんでした。音楽学校への入学をするまでずっと演奏を続けており、人に聴かせることはなくとも確かに名演奏を生み出していた。そういう意味では彼の生き様はフィクションの漫画作品ではあるが、のだめカンタービレのヒロイン・のだめによく似ている。彼女はただピアノが好きだからという理由でむちゃくちゃな演奏をする奇人だが、その技術はプロですら舌を巻くほどだ。しかし幼少時の音楽教室が起こした過度な教育論に追い詰められ、一時は音楽をやめようとすらしていた。

しかしのだめの家族は彼女には音楽しかないことを理解しており、東京の音大へと娘を単身送り出す。そこで千秋と邂逅し、やがて彼から受ける影響に触発されて紆余曲折、挫折といった艱難辛苦を乗り越えてプロのピアニストへの道を駆け上がっていった。

やめようと思ってもやめる訳にはいかない、また家族がやめさせるわけにはいかないと、その才能を認めた上でホアンさんもまた音楽から切り離されることはなかった。それしか彼が生きる術となる手段がなかった、それだけ切実な問題がこの映画を通しても見えてきます。

ピアニストという職業も

今でこそ盲目のピアニスト、なんて言葉を使うと肩書としては立派ですが、ピアニストとしてのプライオリティはどこにもありません。そもそも目が見えないというハンデで賞を取れるほど、甘い世界ではない。ピアニストだけで世界を見わせば何千人といるのか、卵を含めるとそれこそ数えられません。

それでもホアンさんがここまで有名になれたのも、幼少期から音楽に触れ、時に挫折を覚えることはあっても音楽そのものから身を退く事無く頑張り、努力し続けた結果で獲得した成果だ。ピアニストとして活躍している人の中には、ホアンさんのように音楽しかない、ピアノを弾くしか自分には生きる道はない、そのことを酷く痛感している人も多いのです。

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