ピアニストが活躍する映画特集

生涯、陸地へ降りなかったピアニストの物語

海の上のピアニストという名作

戦場のピアニスト・光にふれる・シャインと、ピアニストを題材にした映画は大半が実在する人物の半生がモデルとなっている。その人が音楽を、ピアノを引いていく中でどんな苦悩があり、葛藤を乗り越えて見出した音楽というものの真価とピアニストとしてのプライド、それらが合わさって誕生した作品に魅了される人が多い。現実に生きている、生きていた人間の物語をベースにしているからこそ面白いわけだが、中には全く存在しない架空人物を取り上げた作品もある。本当の意味でフィクションになるわけだが、映画を見ていたら本当にあったかもしれないと思えるほど、精巧に作りこまれている作品もあります。

最後に紹介するピアニストを題材にした作品として1998年に公開された『海の上のピアニスト』について、紹介していこう。

物語概要

人によってはこちらの作品を見て、『戦場のピアニストと間違えているのでは?』と指摘する人もいると思います。知らないだけでしょうが、実はこちらのタイトルの映画は事実として存在しています。ですが世界的に見ても、お世辞にも言えないほどヒットしなかった映画なので、知っている人は知っているというレベルのものだ。何故ヒットしなかったのか、その理由を尋ねられると中々難しい。映画が公開されたのは1998年で、日本に上陸したのは翌1年後の1999年となる。この当時の筆者は洋楽なんて見もしなかったので当然知らなかったが、見ていて実に興味深い内容となっている。

ではこちらも簡単にあらすじから見ていこう。

あらすじ

第2次世界大戦終戦直後、マックス・トゥーニーは持っていたトランペットを質に入れるために楽器屋を尋ねる。交渉成立後、もう一度だけ弾かせて欲しいとして彼がかつて覚えていた楽曲を引き、その曲を聞いて店主は同じ作曲がされているレコードを持ちだして曲と演奏者が誰なのかを問うてきた。

それは一人の白人の話、何処へでもいけたはずなのに、何処にも行けず、その生涯を豪華客船と共に終わりを迎えた、演奏家の物語である。

豪華客船で生まれた少年

この物語の主役はマックスではなく、彼が豪華客船で出会った1人の青年の物語になります。その少年は誰が親か分からず、産み捨てられていました。そこは大西洋を横断するために建造された豪華客船ヴァージニアン号、その青年が生涯出ること無く過ごすことになる彼にとっての家だ。その船で機関士をしていた黒人のダニー・ブートマンに拾われ、彼から新世紀にちなんで『1900(ナインティー・ハンドレッド)』と名付けられます。

大切に育てられ、船の揺れが赤ん坊だった彼にとって最高のゆりかごでした。ダニーから一心に愛情を受けて育っていく1900でしたが、事故によって育ての親である彼を失ってしまいます。粛々と営まれる葬儀の中で、BGMとして流れた音楽に興味を持った1900はピアノというものに興味を持ち始める。やがて客船内にあるピアノへと足を運ぶようになり、そこで彼は彼の思うがままにピアノを演奏していく。

それは誰も聞いたことがない、彼だけの音楽そのものだった。

決して悲観するものではない

こうして物語を見ると、捨て子だった少年が酷い幼年期を過ごす中で出会った音楽を通じて改心し、音楽家としての道を歩んでいく物語に思えるかもしれません。確かに産み捨てられたことは彼自身にとって不幸といえる出来事かもしれません、ですが育ての親であるダニーは人種という壁にとらわれずに彼を一新に、実の息子のように愛していました、黒人と白人という対立により、アメリカとの関係が崩れそうになっていた時代において、そんなこと関係ないと言わんばかりに寛容な態度を見せるダニーは印象的だ。

しかしそんな彼を事故で失い、一人ぼっちになってしまった1900は生きる意味を見つける。それが音楽、ピアノというこれまで見たことも触ったこともないものだった。やがて彼がピアノに触り、演奏を奏でていくとたちまち噂が飛び交うのだった。

DQNネームだけど

余談だが、彼の名は1900と新世紀にあやかってのことらしい。今風にいうと完全にDQNネームなのだが、そこを突っ込むと残念な感じになってしまうので、あまり気にしないでおこう。

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