ピアニストが活躍する映画特集

音楽との出会い

マックスとの出会い、音楽での成功

1900が生まれてから27年という月日が経過する、この間も彼は船に乗り続けている。その間に何をしていたかは明らかにされていませんが、音楽に関わるような事をしていたのでしょう。やがて友人であり、彼と共に音楽を奏でる仲間として活躍する若き日のマックスと1900は出会った。1900の演奏を聞いてバンドを組み、彼となら最高の音楽が楽しめるとして早速船内で演奏会をします。最初こそ邪険にされ、どこの馬の骨とも分からない人間の演奏なんてといったように、乗客たちの関心を集めることはありませんでした。

しかしそれも1900が一音奏でていく事に驚きと共に静寂が男女問わず、音楽に精通したヨーロッパ人の心を氷を溶かすように融解して驚きを伝播させていく。最高潮にまで膨れ上がったときには、1900のピアノは音楽にうるさいセレブ達を圧巻させてスタンディングオベーションを引き起こした。

『名も知らぬ天才ピアニストが豪華客船で、誰も聞いたことのない名曲を披露している』、そんな触れ込みが瞬く間に人々の興味関心を誘う。船としても1900の評判には上々と示し、本来下働きでしかない彼の演奏目当てで乗客する人の数も増えたことに経営陣も笑みが隠せなかった。そんな彼の噂を聞いてプロの演奏家として活動していたモートンが、邪道な音楽だと罵る1900を負かすために演奏勝負を持ちかける。

結果は、何者をも寄せ付けない完璧でありながら繊細で、そして多彩な音に満ち溢れた最高の名曲とさえ言える奇跡を披露した1900の圧勝だった。プロにさえ勝った1900を彼の演奏を聞くために乗ってきた乗客は称賛の声を送り、相棒としてその背を守っていたマックスも喜びを素直に表現する。

一つの出逢い、一つの決意

誰もが虜にされる、名無しのピアニストとして活躍する1900の演奏をレコードにして販売しようと、レコード会社が録音するために船へとやってくる。本格的なデビューが決まるかもしれない大一番でしたが、そんな状況をまるで理解していないように1900はいつもどおりピアノを弾き始めます。恐らく彼にとってピアノを弾くことはしなければならないこと、というよりはそれこそ呼吸するように、二酸化炭素を吐き出して酸素を吸い込む位に恒常的なことだったのだろう。

全く話を聞かない1900の演奏を録音するレコード会社の関係者だが、演奏をしている時には普段周りなど見えていない1900の視界に飛び込んできたのは1人の女性だ。今の今まで見たことがない、抱いたことすらない感情が芽生える。ひと目で恋に落ちるとはこのことだ、そしてそんなカラフルな感情を表現するようにそれまで見せたことがない多彩な演奏が繰り出された。

予想外の名作誕生に喜ぶレコード会社の関係者だが、1900はそのレコードを持ち去ってしまう。事実上の契約破棄だ、そしてそのレコードを彼女に手渡して愛を伝えようと決心する。だが今まで音楽だけに没頭してきた彼には、そこまでするだけの勇気を持てずに時間を持て余してしまうのだった。やがて船は目的地にたどり着き、彼女もまた船から降りてしまい、1900はレコードを渡すことは出来なかった。

渡せなかったレコードを割り砕いてなかったことにしようとするが、想いを捨てきれない1900はあることを覚悟するのです。それは生涯、降りるという発想すら考えなかったヴァージニアン号から離れるという決心だったのです。

1900という存在

ここまでの話を総括すると、捨て子として船から一度も降りないままおよそ30年近い時間を船の中で過ごしていたことになる。劇中では船底で見る海の中の光景を毎日眺めては、当然のように受け止めている幼少期。ダニーを失ってから失意に暮れる暇もなく、ピアノという存在に傾倒していく姿はまるで無邪気な子供が遊び道具として見つけた時のような興奮が伝わってくる。

弾くだけで魅了し、奏でるだけで人々を歓喜に震わせ、演奏することは1900にとって当たり前になっていった。例えデビュー出来るかもしれないという、音楽家にとって最高の展望があっても彼にとっては無価値なもの。そんな1900の心境に変化を与えた女性との出会いは、彼が初めて『人間』だという表現が垣間見える。こういう表現になってしまうのは、ただピアノを弾き続ける1900というのは、人間と呼ぶにはあまりに機械的で、無機質なものに見えたからだ。

異性を意識する、人間なら誰もが子孫繁栄を目的とした発情動向が見られるのは普通でしょう。それすら1900にとっては無縁だったが、少女との出会いが彼に人間としての変革をもたらした、そう筆者には見て取れた。

船を降りようと

そんな1900が家でもあるヴァージニアン号から降りる決意をする。これは船員の多くが衝撃を隠せず、大騒ぎとなった。これからは船に縛られない、1人の人間として生きていくのだろうと祝福する声もあった。今の今まで船の中で生きてきた1900という存在を内心では船員たちも哀れんでいたのかもしれません。

彼女と再会してこの想いを伝えたい、そう決心した1900がタラップを降りて地面に足を着こうと、することはなかった。彼は途中で立ち止まり、何故かその一歩を踏み出せずに留まってしまう。やがて何かを理解したように1900は船へと引き返し、ヴァージニアン号での生活を享受していくのだった。

誰もがいなくなっていく

1900は愛した女性を追うことを止めても時間は流れる。やがて共に過ごしていた船員たちが一人一人去って行き、遂には彼の盟友であるマックスですら降りてしまった。この時の彼はどうして降りなかったのか、1900の行動を理解することが出来なかったのもある。特別説得すること無く、静かに去っていく。やがて誰も知る人間がいなくなりながらも、1900はただずっと船の中に残り、1人ずっとピアノと向かい合う日々を繰り返していくのだった。

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