ピアニストが活躍する映画特集

彼が手に入れた新たな道へ

精神の病については本当だった

父親との関係については当人たちの話を信じるとするなら、誇張したものだということになる。本人としても家族としても、父が謂れのない中傷に苛まれることだけは避けたいとして猛抗議したとも言われている。映画を面白くするためだったとはいえ、脚本家のこうした捏造はやはり実際の人物たちにすれば名誉毀損と言える。事実と異なる表現をするべきではない、そう言われても仕方がないでしょう。

ですがデイヴィッドの半生を描いた今作で、リアルに再現されているとも言われているのが、彼が留学先で発症してしまった精神病についてだ。劇中ではコンクールに出場した後には重度の症状が出るまでになっていたが、実際には留学先から既にノイローゼの兆候が見て分かるくらいに出ていたと言われている。何も誰かに追い詰められたせいで、というわけではない。精神病とは時として、時分で自分を追い込みすぎる、完璧を追求するがあまりに自分の臨んだモノと違った結果が出ることに対して我慢ならないと感じている人などが要注意と言われています。

そう見ればデイヴィッド・ヘルフゴットは音楽家として、完璧主義を追い求め過ぎたのかもしれません。遺伝的なものだと言われても、突如として発症するものではない。その一端となる何かがあったから精神を病んでしまった、そう見るべきだ。

天才ピアニストとまで呼ばれた天才少年は、青年期になってから転落という人生を歩むことになる。それは彼が最も苦しんだ時代で、最も忘れられない時期だった、そう言えるくらい濃密なものだ。

闘病生活の始まり

留学先で明らかな精神異常の徴候が見られたというデイヴィッドさんですが、それは留学前からだったという。それを見逃さなかったのは他でもない、指導していた父だったのです。精神的に不安定なことを見て取れたため、とてもではないが単身留学先に出すなど出来ないというのが本当のところだったのでしょう。そもそも精神病を患っている場合、日本では海外への出国が認められないケースもあるので、それも見越してのことだったのかもしれません。

最初は14歳の時に奨学金で留学ができる話が出たものの、それから19歳まで待った。なんとか無事に渡航することは出来ましたが、1970年に故郷へ帰国した際には不安神経症を発症していたという。その後結婚するもすぐに離婚し、精神病棟へ収監された後は長きに渡る闘病生活が幕を開けた。

入院中の治療

入院したのはまだ20代前半、ピアニストとして活躍が期待されながらも精神不安から活動が思うようにできなかったデイヴィッドさんは10数年にも渡る闘病生活を強いられます。向精神薬や電気痙攣療法といった、当時最新の精神病を治す技術を用いて回復を信じていた。だが10年という時間の長さから考えれば、その治療が思うように捗らず、治るのかどうかすら分からない中で治療を続けた。その頃にはピアニストとして活動していくには遅れなどが見られるようになり、リハビリも兼ねてワインバーでの演奏を行って社会復帰を目指していきます。

劇中では躍動するような

このワインバーでの演奏を初めて行った時は、彼の技術は長年ピアノから離れていても衰えることがなかったと、伝説的なまでに華々しい復活劇を演出している。その後評判が集まり、コンサート会場での演奏を披露するようにもなって、一流のアーティストになったというところで映画の物語は完結している。ここだけ見れば才能に恵まれた人はいつになっても輝き続けるということを紹介していると見えますが、実際にはそんな簡単な話ではなかったのです。

確かにデイヴィッドは演奏活動を精力的に行い、ワールドツアーを行うこともありましたが、内容は決して高く評価されず、酷評されたという。それからというもの、積極的なリサイタルを行うこともなくなり、今は隠遁生活を送りながら地道な演奏会を開いているそうだ。その半生と知名度は本物だったのかもしれませんが、やはり転落したという印象が否めない人生の酷さが見える作品でもありそうだ。

傑作として

作品が発表された後に、映画の内容に対する親族などの抗議もありましたが、映画としては大成功を収めている。事実、当時のアカデミー賞とゴールデングローブ賞、更には英国アカデミー賞と並み居る表彰式で主演男優賞を受賞しているのだ。主演のジェフリー・ラッシュ演じるデイヴィッドの狂気めいた演技ぶりに誰もが恐怖しながら、迫力ある貫禄に圧倒されたといえる。

いくつか矛盾・捏造といったその人の人生を乱すような展開はしばし見られたものの、概ね成功したといえます。ただ実在する本人とはかけ離れた人物像だったり、父親の暴君ぶりという側面が正しくないという欠点はありますが、見て損をすることはない、音楽ってやっぱりいいといえる作品になっている。

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